フランスで花と過ごすいい夫婦の日
花屋さんの多いパリ。
お祝いや記念日に花を贈るだけでなく、花を贈るための日もある。5月1日はすずらんを贈るミュゲ(muguet)の日。この日だけは花屋さんだけでなく、誰でもすずらんを売っていいので、街はすずらんを持った人で溢れる。
しかし、そんな素敵な日にも私は花を買わなかった。
うちには花瓶もなく、そもそも狭いので余計なものは置きたくない。ベランダの家庭菜園も食べられる植物しか植えたくないので、花とは縁のない生活。「花は好きだけど、買うかどうかは別」と思っていた。
バレンタインデーが終わったある日。なんとなく「ホワイトデーには男の人から女の人にプレゼントを贈るんだよ」と彼に言ったら「フランスにはホワイトデーはないよ!」と。
「そういうもんだよな」と思っていたら、なんとホワイトデー当日にサプライズで花束をもらった。とても嬉しかった。もらったピンクの薔薇の花束を抱えて帰ってきた彼は、少し照れ臭そうだけど、私の驚きつつも喜んでる顔を見て、とても嬉しそうだった。
初めてうちに花が飾られると、部屋が一気に柔らかい雰囲気になった。「食べられない植物は、うちにいらない」と思っていた私だが、美しいだけの花に心がうきうきする。
狭いアパートなので、スペース節約のため役に立たないものはいらないし、すぐに捨てたいと思っていた。でも、この綺麗なだけで、しかも結構なスペースを取り、永遠には持たない花がこんなにも愛しいなんて、思ってもみなかった。
私があまりにも喜んでいるので、それ以来彼は散歩の途中で可愛い花屋さんを見つけたとき、私の生理痛が辛いとき、お遣いのついでなどに花を買ってきてくれるようになった。
花があることで、部屋の空気が明るくなるのを感じた。なんというか、「余裕のある生活」をしている感じ。
フランスに来てから、まだまだ不自由なフランス語でのコミュニケーションのストレス、コロナの外出制限によるストレス、部屋が狭いことのストレスなどを感じていた。
少しでも生きやすくなるために、毎日できるだけフランス語を勉強しようとするが、それができなかった日は自己嫌悪に陥いる。なので無駄なものは全てなくし、効率的に生きるよう努めてきた。
しかし、それらが花ひとつで、こんな簡単にふっと軽くなるとは。
何気ないときに、ちょっとしたサプライズで花をもらうことが増えた私だが、実は私から彼に花を贈ったことは一度もない。
そうだ、今度は私から贈ってみよう。口実としていい夫婦の日(11月22日)に、彼に花を贈ることにしよう。花を贈るための日は、多い方がいい。
「男性が花をもらって喜ぶかな?」と考えたが、その迷いはあっさり消えた。私にとって”彼が笑顔でいること”が嬉しいように、彼も”私が幸せなこと”が喜ばしいようだから。何かを相談するといつも「ヒロコが幸せならそれでいいよ」と言われるし(時々皮肉もあるが)。
彼は花そのものを喜ぶだけではなく、可愛い花をプレゼントできて、その花を私が嬉しく飾る様子を見て、喜ぶように思う。
夫婦間で贈った側も、贈られた側も、喜びを感じられるプレゼントが花なのだろう。
11月22日、彼がどんな反応をするか楽しみ。
編:小嶋らんだ悠香
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