キリスト教のお葬式
の流れ・
献花・服装・
香典など
【マナー基礎知識】
日本ではなかなか馴染みのない、キリスト教式のお葬式。いざ参列するとなった場合、「何をするんだろう」と戸惑ったり、服装や参列マナーについて不安になったりする方は多いかもしれません。お悔やみ花を贈る場合や墓参りに行く際も、どんな花を選べば良いかわからない方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、キリスト教式の葬儀の流れや参列時のマナー、供花の選び方などについて解説します。
今回お話してくださった先生
吉川美津子 さん
葬儀・お墓コンサルタント、終活・葬送系のFP社会福祉士、介護福祉士。旅行会社、葬祭業者、仏壇墓石業者社員を経て、アルック終活&葬儀ビジネス研究所代表。著書・監修本は50冊以上、メディア出演はこれまで500本を超える。著書に「葬儀業界の動向とからくりがよ~くわかる本(秀和システム)」、「お墓の大問題(小学館)」などがある。
※以下内容は、吉川さんへのインタビューをもとに、編集チームが執筆したコンテンツです
目次
キリスト教式葬儀の大きな流れとは?
日本のキリスト教式葬儀は、日本の一般的な仏式の葬儀に即した流れで執り行われます。
仏式葬儀の流れとは、お通夜で故人と親しい家族・友人などが集まり、故人と最期の夜を過ごします。翌日の葬儀と告別式で一般の参列者が集まり、故人との別れを行います。
※近年は仏式でもお通夜を行わず、1日で葬儀・告別式と火葬を行うケースもあります。
本来、キリスト教の葬儀において、お通夜に該当する儀式はありません。しかし、日本の仏式葬儀の慣習に合わせて、お通夜を執り行います。ただし、仏式と同じくキリスト教式でもお通夜を行わないケースもあります。
●キリスト教式葬儀の当日の流れは?
キリスト教の葬儀では、聖書朗読・礼拝の歌の斉唱・説教・献花などを行います。ちなみにお通夜、葬儀を執り行う聖職者、礼拝の歌についてキリスト教の宗派でそれぞれ呼び方が異なります。
カトリック | プロテスタント | |
---|---|---|
お通夜 | 通夜の集い | 前夜式 |
聖職者 | 神父 | 牧師 |
礼拝の歌 | 聖歌 | 賛美歌 |
教会や葬儀会場に到着したら、まずは受付で「お花料(香典)」を渡します。その後の流れは、宗派で少し異なります。
キリスト教の葬儀で渡す「お花料」とは?
▼
●カトリックの葬儀の流れ
- <通夜の集い>
-
細かな決まりはなく、神父による聖書朗読、聖歌の斉唱、献花などを行います。
- <葬儀>
-
- 入堂聖歌:神父が聖歌と共に入堂。この際、参列者は起立します。
- 開式の辞:神父が棺に聖水を注ぎ、献花します。
- 葬儀のミサ:言葉の典礼(神父による聖書朗読、説教、黙とう)、感謝の典礼(遺族がパンとワインを捧げ、神父からカトリック信者へ配られる)を行います。
- <告別式>
-
- 入堂聖歌
- 聖歌斉唱
- 弔辞、弔電紹介
- 献花
- 遺族あいさつ
キリスト教の葬儀で行われる
「献花」とは?やり方は?
▼
●プロテスタントの葬儀の流れ
- <前夜式>
-
細かな決まりはなく、牧師による聖書朗読、讃美歌の斉唱、献花などを行います。
- <葬儀・告別式>
-
- 入場:オルガン演奏と共に牧師、棺と喪主、遺族の順に入場。この際、参列者は起立します。
- 聖書朗読・祈祷:牧師が聖書を朗読し、祈りをささげます。
- 説教:牧師が故人を紹介し、説教を行います。
- 弔辞、弔電紹介
- 祈祷・オルガン演奏
- 告別の祈り・献花:牧師の祈りの後、一同で賛美歌を歌い、献花を行います。
- 遺族あいさつ
日本のキリスト教式葬儀は1%以下!?
▼
キリスト教の葬儀はどんな服装で参列すればいい?持ち物は?
●参列時の服装は?
キリスト教の葬儀に出席する際は、喪服を着用するのが一般的です。
●参列時の持ち物は?
自身がキリスト教信者でなければ、必要な持ち物は特にありません。自身がキリスト教信者であれば、カトリック式であればロザリオ(十字架のようなもの)など宗派に合わせたものを持っていきましょう。
キリスト教式のお悔やみの言葉とは?
仏式の葬儀と同様に、キリスト教の葬儀でも「この度はご愁傷様でございます」や「心よりお悔やみ申し上げます」などの言葉がけが一般的です。
● キリスト教式のお悔やみの場で控えるべき「NG表現」は?
- 仏教的表現
-
気をつけたいのは、「ご冥福をお祈りします」という言葉。「ご冥福」とは明らかな仏教的表現にあたるので、避けたほうが無難です。また、「お浄土」という言葉も仏教的表現なので使わないようしましょう。
※ただし、「ご冥福」という表現は近年一般的に使われる言葉になっているため、そこまで気にする必要はないという考え方もあるようです。
- 重ね言葉
-
キリスト教式・仏式問わず、お悔やみのシーンで重ね言葉を使うのはNGです。これはあくまでも日本の慣習として、重ね言葉には不幸が続くイメージがあるためです。
(例)いよいよ/度々/再三/しばしば/ますます/まだまだ/重ね重ね/くれぐれも など
キリスト教の葬儀で行われる「献花」とは?やり方は?
●献花とは?
キリスト教の葬儀における献花とは、故人への敬意と尊敬を表すために行われる儀式のひとつです。
祭壇や故人の棺に花を捧げ、故人への最後の別れと感謝の気持ちを表現します。仏式の葬儀におけるお焼香と同じ意味合いと捉えて、お焼香の代わりに一本ずつ花を供えましょう。
なお、献花に用いる花は、葬儀社が用意することが一般的です。花の種類は、白いカーネーションや旬を迎えた白い花が多く選ばれています。
●献花のやり方は?
お焼香と同じく、式の中で献花をする段階になったら、参列者が順番に行います。
- ①聖職者もしくは葬儀場のスタッフから花が手渡される
- ②そのまま両手で花を受け取る
- ③故人へ花を捧げる(花の向きは、喪主やご遺族のやり方にならう)
- ④合掌で祈るなど、いつも行っている方法で故人への別れや感謝の言葉を伝える
キリスト教の葬儀における「供花」とは?
●供花とは?
献花はお焼香と同じ意味を持つ祭壇や棺へ捧げる花ですが、供花(きょうか)は教会や葬儀会場の祭壇、または特定の場所に飾られる花を指します。一般的に、故人やその家族や親族・知人などからの贈り物として、葬儀社が取りまとめて用意します。
●故人へ供花を贈りたい場合はどうするべき?
故人へ供花を贈る際は、遺族から連絡があった後で葬儀会場へ連絡して「〇万円で花をお願いします」などと注文するのが一般的です。
●どんな花が供花に適している?
会場に飾られる供花の種類は、自分で選ぶというよりも、葬儀社が取りまとめて選んで発注するのが一般的です。
供花のスタイルは、仏式の葬儀と同様にスタンド花がほとんどです。しかし、仏式の供花と異なるのは、花一つひとつに出した人の名前が書かれた札を立てることはしません。札は取って、芳名板(花を贈った人の名前を掲示するもの)として入口に置かれることがあります。
キリスト教の葬儀で渡す「お花料」とは?
●お花料って何?
日本で執り行われるキリスト教の葬儀では、仏式の「お香典」と同じ意味合いで「お花料」を渡します。これは「葬儀はお金がかかるもの、だから互いに助け合いましょう」といった相互扶助の意味を持つ、キリスト教にはない日本独自の風習です。
●お花料の相場は?
- 家族・親族の場合:5,000円〜(高額になると10万円程度の場合も)
- 友人の場合:5,000〜10,000円
- 会社関係の場合: 5,000円
ちなみに、お花料として5,000円以下をお渡しすることは殆どありません。その理由は、お花料返し(香典返しと同様のもの)は受け取った金額の半額を返すのが一般的であるから。もし3,000円のお花料だと1,000円程度と少額のお返しとなり、相互扶助の意味が薄れるからです。
●お花料を包む封筒は何を選ぶべき?
市販の白い不祝儀袋に包んでお渡ししましょう。ユリの絵が描いてあるものもおすすめです。ただし、ハスの花が描いてある不祝儀袋は仏教的な意味を持つので避けてください。
水引は、中国から伝来した日本の文化であり仏教とは関係がないので、結ばれていても大丈夫です。ただし、お花料はそこまで高額ではないことが多いので、お包みするのであれば水引が印刷されているシンプルなデザインの不祝儀袋が適しています。
なお、お花料は、一周忌法要など葬儀以外の法要の際にもお渡しします。
キリスト教のご遺族の家へ花を贈っても良い?
葬儀会場で飾る供花(スタンド花)以外で、個人的に花を贈りたい場合は、枕花としてご自宅に郵送すると良いでしょう。
●ご自宅へ贈る供花の選び方
ご自宅で飾っていただく花であるため、故人をイメージできるような花を選びましょう。白でまとめる必要はありません。しかし、派手で華やかすぎる色よりも淡いトーンの色でまとめる方が良いでしょう。よく用いられる花は、バラ・カサブランカ(白ユリ)・カーネーションなどです。
花のスタイルは、花束でもアレンジメントでもOK。ただし、あまり大きなサイズ・豪華なデザインを贈ると、お返しが必要になり、かえって相手に負担をかけてしまうことも。置き場所に困ることもあるので、サイズ感には注意が必要です。また、花を贈る際は必ず事前にご遺族へ連絡を取り、受け取り可能な日時を確認しましょう。
お供えのお花を見てみる
▼
●選ばない方が良い花はある?
キリスト教の葬儀慣習において、「この花はふさわしくない」といった決まりは特にありません。もちろん、仏教のイメージがある菊を選んでも大丈夫です。
例えば、故人やご遺族と親しい関係であれば、亡くなった方にちなんだ花や好きだった色の花を贈ってもOKです。とはいえ、これは故人やご遺族との関係性によるところが大きいため、ケースバイケースで考えましょう。
●メッセージカードを付けるとより気持ちが伝わる
個人的に花を贈る場合は、メッセージカードをつけることをおすすめします。故人との関係性がわかるようにすることで、ご遺族もより納得して嬉しい気持ちで花を受け取ることができます。
カードには以下などの内容のメッセージを、故人との思い出やエピソードと共に書くと良いでしょう。
この度はご愁傷様です
いつでもそばにいます
お力になります
●花を贈るタイミングは?
故人やご遺族のための花を贈る機会はたくさんあります。葬儀のときはもちろん、一周忌や命日などに贈るのも良いでしょう。喪中はがきが届いた際に、喪中見舞いとして相手を気遣って花を贈るのもおすすめです。
用途に合わせたお供えのお花を見る
▼
●花の予算は?
お返しのことを考えると、高額になりすぎない方がかえって親切です。関係性を問わず、予算は3,000円〜5,000円くらいが良いでしょう。なお、会社など法人からの花であれば、遺族側はお返しを考えなくていいので、高額の花を贈って良いでしょう。
キリスト教の墓参りの花について
●墓参りに適した花は?
墓参りの花に関するマナーやルールは特にありません。故人をイメージさせる色合いの花や季節の花がおすすめです。一般的にはバラ・カサブランカ(白ユリ)・カーネーションなどが人気です。
ちなみにバラをお供えする際は、撤去する際にケガをしてしまう可能性があるためトゲをとるようにしましょう。
お墓に花をお供えする際には、花立に入れて供えましょう。なお、お墓によって花立が1つしかない場合と、1対になっている場合があります。1対の場合は2つに分けてお供えします。お墓へ直置きするのはNG。墓石が傷んだりカビが生えたりする恐れがあるので避けてください。
●墓参りの服装は?
平時であれば、普段着でOKです。納骨式や一周忌に準じたときなどは、喪服で行くのが一般的です。
まとめ
この記事では、キリスト教の葬儀における一般的な流れと儀式の内容、供花の選び方、墓参りのマナーなどについてご紹介しました。キリスト教のお葬式に参列する機会がある方は、ぜひ参考にしてくださいね。
また、キリスト教の葬儀や花選びに関するもっと詳しいお話を知りたい方は、こちらの記事を合わせてお読みください。
もっとキリスト教の葬儀について知りたい
▼
お供えのお花を見てみる
▼