子どものころから、親しみのあるチューリップ。
ここでは、改めて「チューリップはいったいどんなお花なのか」と「チューリップの歴史」をご紹介しようと思います。
幅広い年代の方が知っているチューリップですが「日本にチューリップが渡って来たのはいつ?」や「チューリップがとても高額で取引されていた?」など…チューリップの歴史まで知っているという方は、少ないのではないでしょうか。
今回は、意外と知らないチューリップについてご紹介しようと思います。
目次
チューリップの基礎情報
まずはチューリップの基礎情報をご紹介します。
春を代表するお花の1つで、馴染みがあるという方もいらっしゃると思いますが、ここで改めて「チューリップはどんなお花なのか」をお伝えします。
●チューリップとは
- 学名:Tulipa
- 科名:ユリ科
- 属名:チューリップ属
- 分類:球根
上記の通り、チューリップはユリ科の球根植物です。
学校でチューリップを育てたことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
種ではなく、球根から育てるチューリップは、他の植物よりも少し印象的だったかもしれませんね。
地域によもりますが、開花時期は3月~5月。
春を代表するお花の1つです。
花壇にチューリップのお花が咲いているところを見かけると「春になったんだなぁ~」と言う気持ちになりますよね。
●チューリップの原産地
チューリップと言えば、オランダを連想する方も多いのではないでしょうか。
オランダのチューリップ畑は美しく印象的ですよね。
しかし、チューリップの原産地はオランダではないのです。
では、チューリップの原産地・発祥の地はどこになるのでしょうか。
チューリップの原産地はスペイン・イタリア・カザフスタン・イラン・中国・西シベリア…など北緯40度一帯だと言われています。
チューリップの原産地は、広い範囲が考えられているようです。
ちなみに、中でもトルコから中央アジアのエリアで、チューリップの野生種が多く発見されています。
実は、この原産地と言われているエリアは、冬場に雨が多く湿度の高い地域として知られています。
現在、私たちが見ることの多いチューリップは、品種改良されているものがほとんどですが、このような気候を好む傾向があります。
もしかすると、チューリップが野生だった時の環境が、関係しているのかもしれませんね。
ちなみに先ほどお伝えしたように、私たちが目にするチューリップは、野生のチューリップではなく、品種改良されたものがほとんどです。
では、品種改良される前のチューリップは、どのような姿だったのでしょうか。
チューリップと言えば、つぼんだお花の形がかわいらしく、すらっと背の高いイメージがありますよね。
しかし品種改良する前は、私たちの知っているチューリップの花姿とは異なっており、草丈も低かったそうです。
では、「チューリップの品種改良が始まったのはいつ?」と、疑問に思う方もいらっしゃると思います。
実は、トルコで12世紀に品種改良されたのが始まりと言われてもいますが、品種改良は初めて行われたのがいつなのかは、詳しく分かっていないようです。
トルコの伝統的なタイルや、古い記録にはチューリップが描かれているそうですが、そこには既に品種改良されたチューリップが描かれているのだそうですよ。
チューリップはなぜ球根?
他のお花や野菜を植える時は、球根よりも種で植えることの方が多くありませんか?
しかし、先ほども少し触れたように、チューリップを植える際は球根ですよね。
実は、チューリップは球根を見ることが圧倒的に多いかもしれませんが、お花が終わればチューリップにも子房(花びらが落ちた後に中心に残っている部分)が膨らんで、種が作られるのです。
では、なぜチューリップは球根で植えることが多いのでしょうか。
それは、大きく分けて2つの理由があるとされています。
1つ目は種からチューリップを育てようとすると、お花が咲くまでに数年かかってしまうということです。
球根を植えてから一般的に、現在植えられることの多いチューリップは、4~5か月程度でお花を楽しむことができますが、種から育てようとすると数年かかってしまうのは驚きですよね。
ちなみに、チューリップの種は、発芽率もあまり高くないようですよ。
2つ目は、種からチューリップを育てるともともと咲いていたチューリップと同じお花が咲くとは限らないということです。
「きれいなチューリップが咲いたから」と、種を取って数年かけて育てても、イメージと違ったお花が咲いてしまったら少し悲しいですよね。
また、チューリップの種を販売する際も、どんなお花が咲くのか分からなければ、困ってしまいますよね。
そのため、チューリップは種からではなく、球根から育てることが一般的になったと言われています。
チューリップを育てているという方は、花が終わった後、本当に種ができるのか見てみるのも、面白いかもしれませんね。
チューリップの種を見ることができるのは、お庭や鉢植えで育てている方だけです。
少し、特別な気持ちになりますよね。
チューリップの開花時期分類
チューリップには、約5,600品種以上の種類があります。
品種改良は現在でも進められており、まだまだ新しい品種が開発されています。
そんなチューリップは、主に開花時期によって大きく4つに分類されています。
これは、オランダ王立球根生産者協会によって分類されていて、日本だけでなく世界のチューリップが分類されているのです。
ここでは、簡単にその分類についてご紹介します。
ちなみに、今回掲載している開花時期は、富山県を基準に掲載しています。
●早生(Early flowering)
開花が4月中旬のチューリップです。
咲き方は一重咲きと八重咲きがあり、草丈が高くならないのが特徴です。
花壇や鉢植えなどで親しまれている種類が多いかもしれません。
●中生(Mid-season flowering)
開花は4月下旬で、早生と異なり中型や大型の草丈のチューリップが多いです。
花色の種類が比較的に多いので、お庭で楽しまれることはもちろん、花屋さんで並んでいる切り花にも多いようです。
●晩生(Late flowering)
開花時期は4月下旬~5月上旬です。
草丈は高いものが多く、すっと伸びている姿が美しいため、切り花としてアレンジメントや花束で使われることが多いとされています。
花色や咲き方(お花の形)が様々あり、フリンジ咲きやユリ咲き、八重遅咲きなど7種類の咲き方があります。
●原種(Species)
開花時期は4月上旬~5月中旬とされています。
品種改良を重ねたものとは異なり、野生種とそれに近い品種をまとめたグループです。
草丈は低いものが多いようですが、高いものもあるようです。
チューリップの利用用途
日本で「チューリップ」と言えば、観賞用が一般ですよね。
鉢植えや花壇、アレンジメントなど、春になるとチューリップは色々な形でかわいらしい姿を私たちに見せてくれます。
実は、世界ではチューリップは、観賞だけで楽しまれているわけではないのです。
オランダを中心に、食べることを目的に栽培されている品種もあります。
この食用のチューリップは、日本では珍しいですが、思っている以上に盛んに栽培されているのだそうですよ。
チューリップの食べ方としては、サラダやお菓子などがメインなのだそうです。
お皿に、彩り豊かなチューリップが添えられていたら、見た目のきれいなおしゃれな食事ができそうですね。
サラダなどで食べられているチューリップは、食用として専用で育てられる品種になります。
そのため、花壇などに咲いているチューリップは食べることができません。
一般的に観賞用として流通しているチューリップには、毒があるので間違っても口にしないようにしてくださいね。
「チューリップを食べてみたい」と思った方は、食用のチューリップを購入するようにしてください。
オランダとチューリップの歴史
先ほどもご紹介した通り、チューリップで有名なオランダ。
風車とたくさんのチューリップの風景は、オランダを象徴する風景の1つにもなっていますよね。
そんなオランダに、チューリップが伝わったのは16世紀と言われています。
●金より高いチューリップ
オランダでチューリップの栽培が始まると、チューリップに関することを収録した本が出版されました。
すると、その本に掲載されていたチューリップの見た目が珍しく美しかったことで、チューリップは瞬く間にとても人気なお花になったのだそうです。
その後、どんどんチューリップの人気は高まり、王族や貴族が斑入りのチューリップなど珍しいお花を咲かせる球根を次々に購入していきました。
すると、それに目を付けた投機家が、チューリップの球根の値段を吊り上げ、大きな利益を得るようになったのだそうです。
当時は珍しい花を咲かせる高価な球根が盗まれ、ものすごく高値で取引されることもあったくらい、チューリップが人気だったと言われています。
加えて「チューリップに興味を持った人」や「チューリップでお金儲けをしようとした人」が多くなり、球根を栽培する人が次第に増えていきました。
それにより、今まで以上に品種も多くなって、咲き方や花色の種類が豊富になりました。
今までに見ない花色や特殊な咲き方が増えたことで、チューリップの人気はさらに高まり、ついには「チューリップバブル」というものが起きました。
これは、世界で初めて起こったバブル経済と言われています。
世界で初めて起こった「バブル経済」の原因がチューリップだったというのは驚きですよね。
当時は特に、斑入りなど模様の入ったチューリップと、淡い色のチューリップが人気だったそうです。
この淡い色のチューリップは、ウイルスに感染してしまっていて、育てることが難しく球根の数もそれほど多くないという希少性から、とても高値が付いていたと言われています。
ウィルスに感染していて弱っている球根が、人気だったというのは、今では少し不思議な感じがしますよね。
しかし、当時はそれほどチューリップが人気だったのです。
なんとチューリップの球根が、金よりも高く取引されていたこともあったのだそうです。
●チューリップバブルの崩壊
一気に膨れ上がっていった、チューリップバブル。
このままチューリップの人気はつづくと思われていました。
しかし1637年2月、ある町でチューリップが全く売れなくなるということが起きました。
すると、これをきっかけにチューリップの価値が、一気に下がってしまったのだそうです。
突然、全くチューリップの需要が無くなったことが球根を販売する売人に広がり、多くの人が、そこからパニックになったと言われています。
いつまでも人気があるとおもっていたものが、ある日突然売れなくなってしまったら、パニックにもなってしまいますよね。
それが、高額な物ならなおさらです。
こうして、突然にはじけてしまったチューリップバブル。
このバブル崩壊の原因は、あまりに値段が上がりすぎて、まったく買い手がつかなくなったことからだとも言われているようです。
「高額になると思って育てていた球根が、誰にも買ってもらえない」なんてことがあれば、困ってしまいますよね。
当時は、お金儲けをしようと、チューリップの球根に大金をつぎ込んでいたという人も少なくなく、一文無しになってしまったという人もいたのだそうです。
経済にチューリップが大きく関係していたということを知ると、現在でもチューリップの人気が高く、ファンが多いことも納得できますよね。
日本とチューリップの歴史
ここからは、日本に伝わってからのチューリップの歴史をご紹介します。
●日本にチューリップが渡ったのはいつ?
日本にチューリップが伝わったのは、江戸時代後期と言われています。
今は、子どもから大人まで人気のあるチューリップですが、伝わった当時はそこまで興味を持たれることがなかったのだそうです。
もともと日本に伝わったチューリップの数が少なかったということや、上流階級のごく一部の人の観賞用とされていたことも原因の1つだったと考えられているようです。
日本に伝わってすぐのチューリップは、高級品だったのですね。
ちなみに、チューリップが本格的に日本で生産されるようになったのは、大正時代になってからです。
●日本での主な生産地
現在、チューリップの生産が日本で中心になっているのは、富山県と新潟県です。
富山県はチューリップの球根生産量が日本一であり、新潟県はアレンジメントや花束で使う切り花の生産が日本一なのです。
2つの県の気候は湿度が高く、気温がそこまで高くならないという気候であり、チューリップの栽培に適していたことが日本一になった要素の1つかもしれませんね。
ちなみに、富山県でのチューリップ栽培は、「チューリップの父」と呼ばれている水野豊造氏が貢献しました。
水野氏は、富山県の冬場の水田を有効に活用するため、球根栽培に着目したと言われています。
その後、富山県では約450品種のチューリップが栽培され、中にはオランダに渡ったものもあるそうです。
また新潟県には日本で最初のチューリップ球根の商業栽培であることを記念して、チューリップ発祥の地の記念碑が建立されました。
記念碑は 1989年に建てられたそうです。
長い歴史を持ったチューリップ
今回は、チューリップの特徴や歴史についてご紹介しました。
歴史を知ってからチューリップを見ると、いつもとは違った印象を持つかもしれませんね。
経済を動かすほどの力があったチューリップは、現在も豊富なカラーバリエーションと様々な咲き方と草丈があり、花壇などを華やかにしています。
「チューリップが好き」というファンの方は、今でも世界中に多くいらっしゃいます。
チューリップのことが気になったという方や、少し珍しいチューリップを見てみたくなったという方は、お花屋さんやチューリップ畑に行ってみてくださいね。
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