実は日本式!?
キリスト教式葬儀の
意外な事実
【専門家インタビュー】
みなさんはキリスト教のお葬式に参列したことはありますか?
多くの方は、仏式以外のお葬式に参列する機会はそこまで多くないかもしれません。しかし、いざキリスト教式葬儀のお知らせが来た際に供えて、葬儀の流れや控えるべき振る舞いを知っておくと安心ですよね。
そこで、アルック・終活&葬儀ビジネス研究所の吉川美津子さんに、キリスト教の葬儀へ参列する際の心得や振る舞いについて教えていただきました。
今回お話してくださった先生
吉川美津子 さん
葬儀・お墓コンサルタント、終活・葬送系のFP社会福祉士、介護福祉士。旅行会社、葬祭業者、仏壇墓石業者社員を経て、アルック終活&葬儀ビジネス研究所代表。著書・監修本は50冊以上、メディア出演はこれまで500本を超える。著書に「葬儀業界の動向とからくりがよ~くわかる本(秀和システム)」、「お墓の大問題(小学館)」などがある。
目次
日本で執り行われるキリスト教式葬儀は「1%以下」!?
――日本では、キリスト教のお葬式に参列する機会は少ないですよね?
キリスト教式の葬儀は、日本で執り行われる葬儀のうち0.8%~1%ほどだそうです。つまり参列する側は、キリスト式葬儀について「よく知らない」人が大部分です。よってさまざまな儀式を行う中で、他の参列者から「それってマナー違反では?」と咎められるようなことはまずないでしょう。
基本的には、仏式の葬儀に参列するときと同じ流れと思っていただいて大丈夫です。仏式と異なるのは式の中で行われる内容だけ。故人を偲んで最後のお別れをする場という意味では、大きく変わりはありません。
親しい人が亡くなれば悲しいですし、亡くなった人を弔おうという気持ちは、国や宗教を問わず皆同じではないでしょうか。よって参列する方は、お別れの場として、故人にこれまでの感謝や愛を自分なりの方法で伝えていただければ良いと思います。
実は日本式! 日本の「キリスト教式葬儀」の流れ
――キリスト教式でも通夜と葬儀・告別式があるのでしょうか?
はい。実は日本におけるキリスト教式の葬儀は、日本の葬儀慣習に即したものになっています。本来キリスト教には通夜という儀式はありませんが、日本では日本の慣習に則して初日に通夜、翌日に葬儀プラス告別式を一緒に行うことがほとんどです。
ただ近年は、仏式でもお通夜を省略することがあります。よって、キリスト教式でもお通夜をやらないケースが増えていますね。
――キリスト教の葬儀では何が行われるのですか?
葬儀は多くが教会もしくは葬儀場で執り行われ、儀式としては聖書朗読・礼拝の歌の斉唱・聖職者からの説教・献花などがあります。
「献花」とは仏式でいうところの「お焼香」にあたる行為で、参列者が順番に一人ずつ祭壇や棺の周りに花を捧げます。お焼香の代わりに一本ずつ花を供えるイメージですね。
――献花のやり方も日本式なのでしょうか?
そうですね。本来のキリスト教の葬儀では、教会で祈り、その後皆で墓地に行って棺に花を入れ、そのまま土葬にします。しかし、日本では祭壇の前で一人ひとりが焼香などお別れをするという儀式が慣習として定着していることと、火葬率が100%に近いこともあって、教会で祭壇や棺へ献花をするようになったんです。
もしもの時のために
キリスト教式葬儀マナーを知っておこう
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礼拝の歌・献花は他の参列者に合わせて行えばOK
――礼拝の歌をよく知らない場合、どう振る舞えばいいですか?
心配しなくて大丈夫ですよ。キリスト教式の結婚式のように歌詞が配られますし、歌えない人はきっと大勢いらっしゃいます。
それに「歌えるかどうか」よりも、「何のために今ここにいるのか」の方が重要です。「自分はキリスト教徒ではないから関係ない」「歌えなくて恥ずかしい」と思うのではなく、遺族への慰め・故人への弔いとして同じ時間を過ごし、参列者の方々と調和した振る舞いをすることを大切にしてください。
――献花についても、細かいマナーは気にしなくて大丈夫ですか?
はい、献花のやり方にはマナーやルールはありません。花を棺にお供えした後は、合掌で祈ってもいいし、黙祷をしてもいいし、その場の雰囲気に合わない弔い方は好ましくありませんが、自分の良いと思う方法で故人への別れや感謝を伝えてください。
信仰とは強制されるものではありません。自身の信仰に基づいた方法で、故人への弔いを行えばそれで良いのです。
宗教を問わず「配慮に欠けた声かけ」はNG
――そう聞くと安心しました。他に何か配慮すべきことはありますか?
キリスト教式だから、仏式だからといった宗教上の違い以上に気をつけないといけないのは、一般的に見て配慮に欠けた言葉を伝えることです。
例えば、「あなたがしっかりしないと」「〇〇さんの分まであなたが頑張らないとね」などの声かけ。また、故人が亡くなった状況やご遺族の心境をよく知らないのに、「大往生でしたね」などと伝えるのもあまりおすすめできません。ご遺族としては「もっと長生きして欲しかったのに」と思っているかもしれないので、これも配慮のない声かけになってしまうかもしれないからです。
太古の昔から人は故人を花で弔っている
――故人へ花を贈ることは、キリスト教においても一般的ですか?
死者を悼んで花を贈るという行為は太古から行われていて、ネアンデルタール人のお墓から遺骨と一緒に花の花粉が発掘された記録もあります。つまり、そのくらい昔から、「亡くなった人を弔いたい」「亡くなった人のために何かをしたい」というときに花を捧げる行為は、信仰問わず人類に共通した認識なのだと思います。
――では、ご遺族のご自宅へ供花を贈って良いのでしょうか?
もちろんです。贈り先の負担にならない程度のサイズのアレンジメントなどをお贈りすると、きっと喜んでいただけるのではないでしょうか。
――どんな種類や色の花が適していますか?
特にルールやタブーというのはありませんが、よく選ばれているのは白いカーネーションやカサブランカ(白ユリ)、マム(西洋菊)系などですね。
キリスト教式では、お悔やみ花を白系でまとめるべきといったマナー上の決まりはありません。故人をイメージさせる色の花を使ったり、季節の花でアレンジメントを作ったりするのも良いでしょう。
ちなみにお供えでは白いバラも選ばれることがありますが、それ以上に白や淡いピンクのカーネションがよく選ばれています。そのため、お供えの花で迷った時はカーネーションを選ぶといいかと思います。
先にお伝えしたように、キリスト教式では亡くなってすぐにご自宅へ贈るお供え花は、多少彩り豊かであっても大丈夫です。例えば、個人的にとても親しい間柄であった方であれば、「ご遺族を元気づけよう」「明るくて笑顔が素敵だった故人をイメージした花を贈ろう」と、季節感たっぷりのひまわりを贈ってもOKです。
とはいえ、これは故人やご遺族との関係性によるところが大きくなります。ビジネス関係など、そこまで個人的に親しくはないのに華やかすぎる花を選ぶと、失礼な印象になってしまうこともありますので注意が必要です。
ご自宅へ贈る供花の予算相場をチェックする
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墓参りには故人のイメージや季節に合った花を
――墓参りのお供え花についても、細かい決まりは無いですか?
墓参りのお供え花に関しても、マナーやルールは特にありません。故人をイメージさせる色の花や季節の花がおすすめです。一般的にはバラやカサブランカ・カーネーションなどが人気ですね。仏教では棘のある花はお供えしないことが一般的ですが、キリスト教のお供えでは棘を取ればOKです。
花粉が墓石に付くと石が変色する可能性があるので、花粉は取り除いておきましょう。また墓地の清掃時にケガをしないようにトゲも取っておきます。ユリやバラをお供えする時は注意が必要ですね。
――故人がキリスト教信者だった場合、墓参りにはどんなタイミングで行けば良いですか?
お墓参りは、故人へ花を供えたい、手を合わせたいとご自身が思われたタイミングで、いつでも行ってください。日本では仏教に準じて亡くなってから1ヶ月後(四十九日前後)や、お盆・お彼岸にお参りすることが多くなっています。
このお盆やお彼岸というものは、民間信仰や各地域の慣習と、仏教的要素が混ざり合ったものです。よって宗教儀礼というよりも、日本の慣習という意味合いの方が大きいと言えます。そのため日本では、キリスト教信者の方も、お盆やお彼岸のタイミングで親族・仲間たちが集まって、故人を偲ぶ日として過ごすケースが多いんですよ。
まとめ
日本ではまだまだ馴染みの薄いキリスト教のお葬式。ですが、葬儀本来の目的である「故人を弔いたい」「故人と遺族のために何かしてあげたい」という想いは、宗教や国を問わず変わりません。基本的なお悔やみの場にふさわしいマナーを知り、大切な方へ最後の別れと感謝の気持ちをしっかり伝えてあげてくださいね。
なお、葬儀の流れやマナー、お花料の相場、お悔やみ花の選び方などについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をあわせてお読みください。
キリスト教のお葬式の流れ等
基本的なマナーをまとめました
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