ペットロスを癒す、
お花の力と
心の向き合い方
【グリーフケア
専門家インタビュー】
大切な家族のペットがお空へ旅立ってしまった時。お部屋の至る所にあの子の存在を感じてしまったり、涙が止まらなかったり……そんなオーナーさんの心をなぐさめてくれるのが、「お花」の存在です。
この記事では、獣医師でありグリーフケアの専門家の阿部美奈子さんに、ペットへの手向けとしてお花を飾る意味や、ペットロスの受け止め方などについて教えていただきました。
- グリーフケアとは
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死別などによる深い悲しみを癒すためのケア。その人へさりげなく寄り添い、ありのままを受け入れ、立ち直ることができるようようサポートします。回復には専門家による治療やカウンセリング、ワークショップなど、あらゆる手法が使われます。
今回お話してくださった先生
阿部 美奈子 さん
マレーシア在住、獣医師。「ペットと人のハッピーライフを出会いからエンディングまで」を合言葉に、マレーシアと日本を行き来しながら「待合室診療」というこれまでにない診療を実施。自らが構築した動物医療グリーフケアを各地で展開中。2019年5月、ペットライフのトータルコンサルタント会社「合同会社Always」を設立。著書に『犬と私の交換日記』『猫と私の交換日記(共に二見書房)』がある。
目次
お花は”あの子の存在”を伝えてくれる
――ペットへの手向けとしてお花を飾ることには、どんな意味や意義があるのでしょうか?
お花には癒しの力があると言われていますが、ペットが旅立った後のグリーフケアにおいても、それがまさに機能すると思います。
人とお花とのコミュニケーションは、言葉ではなく存在そのものです。お花は直接私たちに何も語りませんが、美しさや可愛らしさ、優しさなど、その姿かたちで私たちにメッセージを届け、なぐさめてくれます。
お花と同様に、ペットも言葉ではない表現でメッセージを伝えてくれる存在ですよね。動物たちのまっすぐに生きていく生命力は、どこかしらお花と共通するところがあります。
そういった意味でも、ペットが旅立った後にお花を飾っていると、私たちはその生きている姿になぐさめられ、お花の中に彼ら・彼女らが生きているように感じます。
実際、「○○ちゃんが傍にいてくれるような気がするので、お花を絶やさないようにしている」と話すオーナーさんも多くいらっしゃいます。生活の中にお花があることは、オーナーさんにとって救いや癒しとなるのです。
ルールやマナーはいらない、それがペットへのお花選び
――ペットに手向けるお花を選ぶとき、どのような種類や色がおすすめでしょうか?
人間社会のお供え・お悔やみ花には、種類や色などさまざまなルールがありますよね。でも、それはあくまで人間の世界でのこと。ペットへ贈るお花には、ルールやマナーは必要ありません。
ペットのお供え・お悔やみ花についても、その子に似合うイメージで自由に選びましょう。ペットと人の出会いは世界中に一つしかないもの。だからこそお空へ旅立った後も、その子に似合うオンリーワンのお花を飾ってあげてほしいです。
ふわりと明るい色合いのお花の
アレンジメントで心に温もりを
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今の心が「自然と惹かれる」お花を飾る
――では、花束やアレンジメント・鉢植えなど、お花のスタイルについても自由に選んで良いのでしょうか?
自分が自分のペットのために飾るお花は、ご自身が「これを飾ってあげたい」と感じるお花を自由に選んでください。
ペットが旅立った直後の悲しみが溢れてくる時期には、生命力が感じられる生花に惹かれるかもしれませんし、数年経ったときには、長く飾ることができるプリザーブドフラワーに魅力を感じるかもしれません。感じ方は人それぞれですので、自分の心が選ぶものを手に取れば良いと思います。
――鉢植えや観葉植物など、お世話次第で長く飾れる(育つ)可能性がある植物でも良いのでしょうか?
もちろんです。例えば野や山を走り回るようなことが好きだったワンちゃんであれば、鉢植えのお花や観葉植物を喜んでくれそうですよね。
鉢植えのお花や観葉植物は大きく育つので、旅立った後もペットの命が投影されて、ワンちゃんやネコちゃんが成長しているように感じられます。毎年お花が咲くような植物だと、まるでその子がお花として会いにきてくれるような喜びや愛しさもあります。
ペットを近くに感じられる。
オーナーさんの気持ちへ
そっと寄り添ってくれるギフトとは
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悲しみは深くて当然。自分だけのペットロスを受け入れる
――「ペットとお別れした辛さから数年経っても立ち直れない」という方もいらっしゃいます。悲しみや喪失感を癒すために、オーナーさん自身ができることはありますか?
まずは自分のグリーフ(死別などによる深い悲しみ)を自然なものとして受け入れることが大事です。グリーフは、自分にとって大切なものを失った後の、とても自然な心の反応です。一緒に暮らした時間が長ければ長いほど、悲しみは深くて当然です。辛い気持ちを受け入れ、ありのままで良いことを知ってほしいですね。
人と比べないことも大切です。自分が主役で良いですし、自分だけの悲しみ方で良いんです。人それぞれの悲しみからの回復方法がありますし、オーナーさんとペットとの間にオンリーワンのペットライフがあったからこそ、オンリーワンのペットロスなのですから。
共に過ごした日常を続けることがグリーフケアに
――具体的には、オーナーさんはどのようなことを行うのが良いでしょうか?
例えば、遺骨になったペットと共に、一緒に過ごしてきた日常を続けることはグリーフケアになります。ドライブが好きだった子なら一緒にドライブへ行き、海が好きだった子だったなら海に行くのが良いでしょう。ワンちゃんやネコちゃんが好きだったことや一緒に楽しんだことを、ペットと別れてしまった後も続けてください。
大切なペットとの生活が終わると思うから悲しいのであって、旅立った後もその子の存在は消えません。姿かたちは変わってもその子との新たな生活が始まったという気持ちで、ペットと一緒に生きていってほしいですね。
そうやって、何年でも続けていくのがグリーフケアです。ワンちゃんやネコちゃんのことを想い、お花を飾ったり育てたりするのもグリーフケアのひとつだと思います。
優しく柔らかな色合いのお花が充実
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――グリーフ(死別などによる深い悲しみ)を一人で抱え込まないというのも大切かなと思うのですが、いかがでしょうか?
オーナーさんが悲しみの感情を正直に伝えることができる、話し相手の存在は必要です。一人で抱え込まないで、自分のことを否定せずにわかってくれる人・信頼できる人にありのままの気持ちを吐き出すようにしましょう。
ひとつ注意すべきなのは、「ペットを失う辛さを理解してくれない人には、悲しみの感情を話さない」ということです。そうやってオーナーさんは自分の気持ちを守らないと、ますます心の傷が深まってしまいます。
ありのままの気持ちを、日記や手紙などに書くのも良い方法です。その子に贈る手紙をどんどん書いて、手紙は箱に入れておきましょう。
――ペットの存在を感じられるアイテムを身につけるのはいかがでしょうか。
遺骨を入れたネックレスや、綺麗な石の中に歯や遺骨の一部を入れたアクセサリーなど、ペットの存在を感じられるアイテムを作って身につけるのは、良いグリーフケアになります。他にも、骨壷に編み物を被せて季節ごとに着せ替えたり、白い骨壷に絵付けしたりもできます。
何をその子にプレゼントしてあげようか計画したり、オーダーしたプレゼントが届くのを待ったり、お花を飾ったり……そんな日々の積み重ねがグリーフケアへとつながります。
新しい家族は一番良いタイミングで現れる
――最後に、ペットが旅立ってから次のペットを飼うことについてお聞きしたいです。新しい子をお迎えして良いか迷う方も多いですが、どのようなタイミングや気持ちで迎えるのが良いのでしょうか?
不思議な話ですが、グリーフの心理過程をたどりながら「○○ちゃんのような存在が必要だ」と自分の心が求めたとき、自然と新しい子との出会いがあるものです。
私はこれを「命のバトンタッチ」と呼んでいますが、旅立った子がオーナーさんにとって一番良いタイミングで新しい子を連れてきてくれるのだと思います。ですので、あまり難しく考えずに、ありのままの自然な気持ちでいれば大丈夫です。
大切にしていたペットは、いなくなった後もオーナーさんを助けてくれます。その子が次に連れてきてくれた子は、弟か妹として新しい家族になります。だからといって、先にいた子がいなくなるわけではありません。オーナーさんにとって、その子はお守りのような存在になるんです。今度はずっといなくならない、いつまでも傍にいてくれるお守りに。
ペットのお供え花についてさらに詳しくご紹介
今回は、グリーフケアの観点からペットのお供え・お悔やみ花の選び方、飾り方などについてご紹介しました。ペットロスで辛い思いをされている方へ贈るお花、ギフトの選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてお読みください。
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