ペットのお供え花の
基礎知識。
自分で飾る・相手へ
渡す
タイミング・
種類・注意点など
【獣医師監修】
大切なペットが旅立ってしまったとき、ワンちゃんやネコちゃんなどへの手向け(たむけ)とともにオーナーさんの心を癒してくれるのがお花の存在です。ですが、どんなお花をいつ・どう飾ったらいいのか、また、友人や恋人、家族のペットへ贈るお供え・お悔やみ花についても同様に迷ってしまうかもしれません。
この記事では、獣医師でありグリーフケア専門家の阿部美奈子さんに、ご自身が飾るお供え・お悔やみ花の選び方や飾り方、相手へお花やギフトを贈る際の注意点などについて教えていただきました。
- グリーフケアとは
-
死別などによる深い悲しみを癒すためのケア。その人へさりげなく寄り添い、ありのままを受け入れ、立ち直ることができるようようサポートします。回復には専門家による治療やカウンセリング、ワークショップなど、あらゆる手法が使われます。
今回お話してくださった先生
阿部 美奈子 さん
マレーシア在住、獣医師。「ペットと人のハッピーライフを出会いからエンディングまで」を合言葉に、マレーシアと日本を行き来しながら「待合室診療」というこれまでにない診療を実施。自らが構築した動物医療グリーフケアを各地で展開中。2019年5月、ペットライフのトータルコンサルタント会社「合同会社Always」を設立。著書に『犬と私の交換日記』『猫と私の交換日記(共に二見書房)』がある。
※以下内容は、阿部先生へのインタビューをもとに、編集チームが執筆したコンテンツです
目次
【自分が飾るとき】お供え・お悔やみ花のおすすめは?
● お花の種類や色も、ペットのイメージで選べばOK
ペットのお供え・お悔やみ花について、人間の葬儀やお通夜のお花に必要とされるようなルールやマナーはありません。お花の種類や色は、以下のようなイメージから自由に選びましょう。
- ペットに似合う色
- ペットが着ていたお洋服、使っていた首輪や食器の色
- ペットの性格(優しい、元気、クールなど)からイメージできる種類や色など
人間のお供え・お悔やみ花では使わないカラフルなお花も、ワンちゃんやネコちゃんのイメージに合っていたらOKです。
● お花のスタイルも自由でOK
お花には、花束・アレンジメント・プリザーブドフラワー・鉢植えなどのスタイルがありますが、ペットのお供え・お悔やみ花として、いずれのスタイルを選んでも大丈夫です。
ペットが元気なうちはお花を倒してしまったり球根を誤飲してしまったりする可能性があるため、オーナーさんがお部屋で飾ることができるお花には制限があります。しかし、ペットが旅立ってしまった後は、オーナーさんが「こう飾ってあげたい」「こんなお花を贈りたい」と思うお花を自由に飾ってあげましょう。
【自分が飾るとき】ペットのお葬式で飾るお花の選び方
お葬式やお別れセレモニーで飾るお花・お棺に入れるお花についても、ペットに似合うお花や馴染みのあるお花を選ぶと良いでしょう。
ペット霊園や葬儀社でも、セレモニー用のお花は用意されていることが多いようです。ただし業者へお任せすると、白を基調にしたお花や、白と優しい色合いのお花を組み合わせた一般的なお悔やみ花になるかもしれません。お花を準備する時間や予算が確保できるようであれば、オーナーさんご自身がその子に合ったお花を用意してあげることをおすすめします。
散歩コースで見かけたお花や、ご自宅のお庭に咲いているお花など、ペットにとって馴染みのあるお花があれば、ワンちゃん・ネコちゃんは安心できる雰囲気の中で最期の時を過ごせるのではないでしょうか。
ただし、お花の持ち込みについてはルールがある霊園や葬儀社もあります。ペットのお葬式やお別れセレモニーで使うお花について希望がある場合は、事前に担当者へ相談することをおすすめします。
【自分が飾るとき】お供え・お悔やみ花を飾るタイミングは?
ペットのお供え・お悔やみ花を飾るタイミングについても、特に決まりはありません。ペットを見送った直後や命日・月命日はもちろん、ペットの誕生日や出会った日などの記念日、クリスマスやお正月などのイベント時に飾ると良いでしょう。その時々で、大切なペットと過ごした時間を思い出せると素敵ですね。
お子さんと一緒に育ったペットであれば、卒業式・入学式など、お祝いや節目となるイベントのタイミングに、お子さんの成長をペットへ報告する気持ちでお花を飾りましょう。
オーナーさんの目が届きやすい場所へペットのイメージに合ったお花を飾ることで、「そこに○○ちゃんが存在しているように思える」「お花の存在に癒される」といった方は多いようです。いつもペットの存在を感じていたい方や寂しい気持ちをなぐさめたい方は、生活の中で常にペットの面影を感じられるように、お花を切らさないようにするのもおすすめです。
【自分が飾るとき】他のペットと暮らしている際、気を付けるべきこと
他のペットと暮らしている場合は、お供え・お悔やみ花の選び方や飾り方に少し注意が必要です。ペットにとって害になる恐れがあるお花を避けたり、倒す・誤飲する・ケガをする可能性のあるお花を高い場所へ飾ったりする配慮が必要です。
● 特に気をつけたい品種
- 食べると中毒症状を起こす可能性のあるユリ科の植物、アイビー系の観葉植物・アジサイ
- 誤飲の可能性がある球根植物
- トゲが危険なバラ類 など
ペットにとって危険なお花やおすすめの
飾り方について獣医師さんへ聞きました
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【相手へ贈るとき】お供え・お悔やみにふさわしくないお花は?
ペットのお供え・お悔やみ花にルールやマナーはありません。そのため、「ふさわしくないお花」もありません。ただし、友人や恋人、家族へお供え・お悔やみ花を贈る際は、いくつか気をつけるべきことがあります。
● ペットのイメージからかけ離れているお花
ペットの性格やイメージからかけ離れたお花を受け取った場合、オーナーさんが「うちの子に、このお花は似合わないかも…」といった違和感を感じてしまう可能性があります。
もし、オーナーさんのことを心配しているけれども、可愛がっていたペットについてよく知らない場合は、オーナーさん自身のイメージや伝えたいメッセージを持った花言葉でお花を選び、そのことをメッセージカードなどで伝えるとよいでしょう。
- ピンクのカーネーション:感謝
- チューリップ:思いやり、誠実な愛
- 白いトルコキキョウ:思いやり、永遠の愛
- ガーベラ:前進
- スイートピー:優しい思い出
● ドライフラワー
生花ではないドライフラワーは、お花を受け取った方が「死」を連想することがあります。ドライフラワーを使ったアレンジメントはなるべく避けた方が良いでしょう。
【相手へ贈るとき】お供え・お悔やみ花へ配慮すべきポイント
オーナーさんが自分のペットのためにお花を飾るときは、お花の種類もスタイルもご自身が好きなものを選んでOKです。しかし、友人や恋人、家族へペットのお供え・お悔やみ花を贈る場合はいくつか配慮すべきポイントがあります。
● 置くだけで飾れるお花を選ぶ
家族であるペットを失った後、もしかするとオーナーさんはペットロスでお花を生ける心の余裕がないかもしれません。お花を贈る相手へ負担がかからないという点で、置くだけでお花を飾ることが出来るアレンジメントがおすすめです。
優しく柔らかな色合いの
アレンジメントが充実
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● お花を贈るタイミングはオーナーさんの心模様に合わせて
ペットのお供え・お悔やみ花を贈るタイミングについては決まりはありませんが、お相手の状況や心境を察した上で判断しましょう。
大切なペットを失った直後、オーナーさんにとって深く関わりのある人からメッセージ付のお花が届くと、深い悲しみの中で救われることがあります。〇〇ちゃんにお花やメッセージが集まることで、〇〇ちゃんがたくさんの人や仲間から愛されていたのだとわかり、心が癒されるのです。
ただし、オーナーさんがまだ現実を受け止めきれていないときにお悔やみ花が届くと、人から強制的にペットの死を突きつけられてしまうことになります。「○○ちゃん、本当にいなくなっちゃったのね…」と、より一層オーナーさんのペットロスが深まってしまう可能性があります。
● お花を贈る相手へ前もって連絡を
ペットのお供え・お悔やみ花を人へ贈る際は、オーナーさんの状況や心境を知るため、そしてフレッシュな状態のお花を受け取ってもらうためにも、前もってメールなどで連絡を入れるようにしましょう。
- 連絡するメールの文例
- 「〇〇ちゃんが虹の橋を渡って1週間経ったね。〇〇ちゃんを思い出しながらお花を選ぼうと思うのだけれど、XX日の午後は受け取れそうかな?」
お供え・お悔やみ花を贈ることをオーナーさんへあらかじめ知らせることで、お花を受け取る側にも心構えとお花を飾る場所を準備する余裕ができます。
【相手へ贈るとき】お供え・お悔やみ花の予算相場は?
ペットのお供え・お悔やみ花を友人や恋人、家族へ贈るとき、お相手との関係性によって予算は異なります。以下を一般的な予算相場と考えてください。
一般的なアレンジメント | 3,000円程度 |
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ミニブーケ | 1,000〜2,000円 |
贈る相手との関係性が深い場合 | 5,000円 |
贈り主とオーナーさんとの関係が深い場合、5,000円程度の立派なお花を贈るのも相手を想う気持ちが伝わるのでよいでしょう。
【相手へ贈るとき】お花に添えるメッセージ、注意点とポイント
ペットのお供え・お悔やみ花を知人へ贈る際は、ぜひメッセージやお手紙を添えましょう。ただし、ペットを亡くした悲しみを他人が軽視するような言葉は避けたいものです。
●「早く元気になって」はNG
例えば、「あなたが早く笑顔になったら〇〇ちゃんもきっと喜ぶよ」といった、オーナーさんの悲しみの感情を否定する内容は避けましょう。「少しでも励ましたい!」というメッセージを書いた側の想いとは裏腹に、オーナーさんご本人は「立ち直れない自分がダメなんだ…」と自身を責めてしまいます。また、大切なペットを失って悲しいという気持ちを人に話せなくなり、よりペットロスが深まるケースがあります。
● ペットのことを思い出しながら書くことが大切
ペットのお供え・お悔やみ花へ添える手紙やメッセージは、なるべく贈り主とペットのエピソードを絡めて書きましょう。
「初めて〇〇ちゃんに会ったとき、びっくりして別の部屋へ行っちゃったよね」
「最初はそっけなかったのに、だんだん膝に乗ってくれるようになったなあ」
「SNSに載せてくれていた○○ちゃんの可愛い写真、いつも楽しみにしていたよ」
などと、贈り主とペットとのエピソードを綴り、その上で
「〇〇ちゃん、いつも黄色い服を着ていて可愛かったな。だからこの黄色いチューリップを頼んだよ。〇〇ちゃんも気に入ってくれると嬉しいな」
「○○ちゃんのために、『永遠の愛』の花言葉を持つ白いトルコキキョウを入れたお花を作ってもらったよ」
など、そのお花を選んだ理由やお花に込めたメッセージを書くのがおすすめです。
【相手へ贈るとき】お花以外にギフトを贈るなら?
ペットのお供え・お悔やみとしてお花と一緒にギフトを贈りたい場合は、オーナーさんの心へそっと寄り添うようなアイテムがおすすめです。
● ペットと一緒に食べてもらうイメージのお菓子
ペットと一緒に食べてもらうイメージで、カステラやクッキー・チョコレートなどのお菓子を贈るのはおすすめです。ペットにチョコレートは与えない方がよいのですが、実はワンちゃんはチョコレートが大好物なのです。「今からは食べていいよね」「大好きな○○ちゃんと一緒にお茶を楽しんでね」とメッセージを添えて贈りましょう。オーナーさんがペットと一緒にできることをイメージできるようなギフトを選ぶのがポイントです。
● オーナーさんを癒すグッズ
悲しみの中にあるオーナーさんをそっと癒してくれるようなギフトもおすすめです。ハーブティーやフレーバーティーは人の心をホッとさせる効果があります。また、入浴剤も癒し効果が期待できるギフトです。家族であるペットを失った後は、悲しみやストレスで体が凝り固まりやすいもの。「お風呂でリラックスしてね」などと一言添えてオーナーさんへ贈りましょう。
● ペットをモチーフにしたグッズ
ペットに似ている絵柄のハンカチやタオル、写真を使ったマグカップやタンブラー・カレンダーなども、オーナーさんの心に残る贈り物となります。ペットにそっくりなぬいぐるみや、ペットとオーナーさんの似顔絵がオーダーメイドできるサービスもあります。写真を送ってオリジナルで製作してもらうので多少時間はかかりますが、誕生日や月命日などの贈り物におすすめです。
【お供え・お悔やみ花をもらったら】お返しは必要?
● 基本的にはお返しは不要
お世話になっていた動物病院や友人・家族などからお供え・お悔やみ花やプレゼントが届いた場合、基本的にお返しは不要です。ペットのお供えやお悔やみのシーンでは、人間社会の礼儀やマナーに合わせなくても大丈夫です。
● 感謝を伝えたいなら、自身に余裕ができてからでOK
オーナーさんが何かお返しをしたい気持ちがあればもちろん行って良いのですが、「お返し」という概念で考える必要はありません。
ペットと別れた悲しみへ寄り添ってくれたことに対して感謝を伝えたいのであれば、ご自身に余裕が出てきたとき・気持ちが落ち着いたときにお相手を食事に誘ったり、お家に遺骨がある場合は「〇〇ちゃんに会いに来ない?」と招いたりすると良いでしょう。
まとめ
- ペットのお供え・お悔やみ花はペットのイメージで自由に選ぼう
- お花を飾るタイミングや飾り方は自由
- 他のペットと暮らしているときはNG植物に注意する
- 人にお花を贈るなら、置くだけで飾れるアレンジメントがおすすめ
- お花を贈るタイミングには配慮して
- お花にはペットとのエピソードを書いたメッセージを添えよう
- お花やギフトへのお返しは基本的に不要
上記のポイントを意識しながら、大切なペットのお供え花・お悔やみ花を選びましょう。
ペットのお供え・
お悔やみ花を飾る意味って?
動物医療グリーフケアの
専門家へ話を聞きました
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